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    第139回:岡村孝子さん(シンガーソングライター)

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《2》『待つわ』がヒットしすぎたという誤算

 人と人の密なつながりを大切に考えている岡村さん。その原点はラジオにありました。

「もともと、学生時代に受験勉強をしていた頃、深夜ラジオの全盛期だったんですね。そこでシンガーソングライターの存在も知りました。ある日、ラジオからさだまさしさんの『雨やどり』が流れて来たんです。それまでピアノを習っていて、親の敷いてくれたレールに乗って、音楽の先生か、ピアノの先生になろうと思っていたんです。でもシンガーソングライターになりたいという夢が生まれました」

 地元の名古屋にあるヤマハポプコンセンターに通い始めた岡村さんは、そこで大学で初めて友達になった加藤晴子さんとデュオを組みました。デュオ名の「あみん」は、さだまさしさんの『パンプキンパイとシナモンティー』という歌に出てくる喫茶店の名前でした。
 そこで岡村さんは「そろそろ女性デュオの波が来るのでは」という話を耳にしました。確かにそれまでチャゲ&飛鳥や、雅夢など、男性デュオの受賞が続いていたのです。
そして2人で歌った『待つわ』は、1982年の春、見事グランプリとなったのです。

「私たちは大学との両立を前提に活動しようとしていました。アルバムを作り、皆さんに地道に知ってもらおうという気持ちだったんです。ところが『待つわ』は、私たちがデビューする前にすでに街中で流れていました。楽曲だけがどんどんひとり歩きしていったのです。当時は『ザ・ペストテン』や『トップテン』などテレビの音楽番組もたくさんありました。それに出演するために、2人で上京してホテルに泊まって『こんなはずじゃなかったね』と話し合ったものです。2人共地元でのんびりと生活していたので、東京での人の話すテンポや歩くスピードが全然違う。そのスピードにはついて行けていなかったんです」

 加藤さんはきちんと勉強して卒業して就職したいという意志を持っていました。

「それで1回辞めて、岡崎に帰って。大学に戻ったり、花嫁修行したりしていました。相手を変えてあみんでやればという話もありましたが、それは違うなと。ただ、自分の歌は必要とされているという根拠のない自信がありましたね。1年半でぽきんと挫折して、私は音楽に戻って来たのです」。

岡村孝子さん

《3》自然の中で、音楽を作る楽しさを思い出した

 岡村さんは23歳で、ソロとして再デビューしました。来生たかおさんによる楽曲提供でCMソングにもなった『はぐれそうな天使』、『夢をあきらめないで』などがヒット。岡村孝子の世界を確立したかに見えましたが、本人はやや気持ちが落ちていたようです。

「音楽をすごく好きな気持ちが、そうじゃなくなった時がありました。それで、スタッフと話して、アマチュア時代に、和気藹々と合宿して曲を作ったりした頃が楽しかったと言ったら『それをもう1回やりましょう』ということになったんです。ロンドンから北西に40分くらい行ったところにある、チェッケンドンというところに、アウトサイドスタジオというところがあって。丘があって、羊や牛が草を喰んでいて。春は地平線に菜の花畑が続くようなところです。そこに宿泊施設を備えたスタジオがあったんです。そこで、7作連続でレコーディングをしました」

 彼女は音楽を作るプロセスの楽しさに再び目覚めることができました。よほどその場所と感性がピタリと来たのでしょう。

「デュオを組んでいた加藤さんとはずっと友達で、お茶やランチをしていましたが、解散以来、音楽の話はしていませんでした。でも40歳を過ぎた頃、ちょうど、あみんから数えて20周年のコンサート「DO MY BEST」ツアーの中で『一夜限りのあみん』を再結成し、その後「あみん」を再始動をしてコンサートをさせてもらいました。私が感じた音楽の楽しさを、そこでなら2人で共有できそうな気がしたんです」。

 岡村さんは出産や子育てで7年間、休んでいた時期もありました。

「もうずっと音楽を作り続けていこうと思っていた3年前に、急性白血病と診断され、あの時はもう、年を越したら自分はいなくなるのかなと思ったりしましたね。臍帯血移植を経て、その後無事完全寛解と診断され、おかげさまで、昨日も外来診療に行って、大丈夫でした!」。

岡村孝子さん

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