岡村さんには子どもの頃から、好きな香りがあります。
「実家の玄関の土間に、父が中国から買ってきた石の置物があって、そこでよく白檀をたいていたんです。窓を開けて、その香りが網戸から縁側の方へ流れていくのがすごく好きだったんです。その石の置物はとても重いものだったので、引越しの時にやむなく処分してしまいましたけどね」
どこか和の静謐さを湛えているような岡村さんには、そんな品の良い香りが似合いそうです。
香りは、思い出とともに、またあるもの。2019年の春に入院。闘病していた無菌室から出た時に感じたのは、風の香り。
「ちっちゃな窓がついているんですけど、景色が見えないし、空も見えない。どんな季節で、どんな天気なのか、わからないところで。そこで5ヶ月を過ごして退院した時、ああ、風の香りがするなあと思いましたね」
自然にある香りに敏感な岡村さん。香りとともに思い出や情景があります。
「強烈に憶えているのは、ソロデビューのときに、レコーディングが朝までかかったんですね。スタジオにいる間は降っていた雨が、レコーディングが終わって、朝外へ出ると上がっていたんです。その時の雨上がりの後の香りは忘れませんね」
人生の一瞬一瞬の景色を、岡村さんは香りだけでなく、歌に込めることができる人。
「音楽は絵日記のような存在で、一曲一曲、ページを増やして来ました。あの日の空は澄んだ青だったとか、そうやって思い出すことができるのが、生きている証なのだと思っています。歌は、絵空事で書いたつもりでも、そこには必ず自分がいる。そういうふうに一瞬一瞬をかみしめて、生きて行けたら。歌って行けたらと思っています」
岡村さんの歌には、空や海や、雨や虹や、誰もが心で重ねられる風景があります。その瞬間の風景はきっと、さらに聴く人のそれぞれの人生で輝いていくことでしょう。
■OKAMURA TAKAKO Special Live 2022 “ Christmas Picnic ”
2022年12月 3日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
2022年12月11日(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2022年12月24日(土) 大阪・サンケイホールブリーゼ
■Blu-ray「ENCORE IX」発売中
『ソロデビュー35周年記念&復帰コンサート2021“Hello Again !”』
(2021年9月7日 、東京・LINE CUBE SHIBUYA)を収録した6年ぶりの映像作品。
☆詳細は、岡村孝子オフィシャルサイト
(https://okamuratakako.com/)
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
写真提供 コットンフィールズ