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- スペシャルインタビュー「今、かぐわしき人々」
- 第238回：鏡リュウジさん（西洋占星術研究家）
《２》自然な会話ができる「AI鏡リュウジの弟子」のローンチもまもなく
人間とテクノロジー。確かにそれはこの20年で目に見えるように変わっていきそうです。もうひとつ、人間と動物の関係性も考え直すサインが出ていると鏡さんは言います。
そういえば、全国で被害が増えているクマの出没問題や、都心でのネズミの増殖など、度を超えたことが起こっているのは事実。
「まさにそうですね。ハンターの方の活動もさまざまなかたちで注目を集めています。猟友会の方の高齢化も問題になっていて、あと10年、今のようなかたちが続けられるかどうか。人と自然との距離のとり方が改めて問題になってくるでしょうね。これは占星術以前の問題ではあるでしょうが」
法制度の整備を含め、まさにこれから20年の間の大問題。
鏡さんはさらに、人間と人間の関係性も、新しいテクノロジーによって変わっていく可能性があることを示唆しています。
「倫理的な問題はあるけれど、AIが進んでいくと、おそらく数年で故人の思考もコンピュータで再現できるようになっちゃうんじゃないでしょうか。亡くなった父親や母親の言いそうなことを、AIが生成していく。かつての霊媒なんかよりはるかに精度高く、故人の存在が再現できるわけですね。それは個人のレベルなら懐かしいとかで済むけれど、大企業の創業者とか政治家が死後も「アドバイス」を続けるようになる、といったSFめいた現象が現実味を帯びてくる。大げさにいえば、生と死の境界線すら、真剣に考え直さなければいけない時代がもうそこまできているのかもしれない」
私たちが生きているとはどういうことか。命とはどういうことか。いろいろ考えさせられます。
「でも、後戻りはできないですからね。いつの時代も新たな技術と人類は共存してきました。倫理的な問題を真剣に考えつつ、僕たちは新たな技術と仲良くして、これまでにはなかった豊かさを手にしていかなければいけないんじゃないでしょうか」
楽しく人間を豊かにするために使いたい新しいテクノロジー。
実は鏡さんも「AI鏡リュウジの弟子」の開発に取り組んでいます。
「ローンチに向けて鋭意制作中です。僕の弟子みたいなロボットが、占ってくれるんです。これがかなりすごいです。ホロスコープの見方はシンプルですが、指示によってさまざまな口調を選ぶこともできるようになりそう。テスト版ができたので、近所のお店の子どもさんと遊んでみました」
ただ占うというよりは、自然な言語で会話ができるようなのです。
「その子をMくんとしましょう。Mくんは小学5年生。ガールフレンドができたので、彼女の誕生日にマグカップをプレゼントしたんです。それを『どうだったかな』と聞いてみました。すると
『君が自分の生活に密着したものをプレゼントするのはとてもいいと思うよ』ということを言うんです。それは裏側にあるデータのロジックで言うと、Mくんのホロスコープでは蟹座に金星が入っているんですよ。金星は愛の星で、蟹座はドメスティックなこと、家庭を象徴している。だから、自分の手に届く、自分の生活と切れないところで愛を育んだり、リラックスしたりできる。…それをAIの僕の弟子は拡張して、言葉に変えて、伝えてくれる。その時点で、僕は相当びっくりしたのですが、その先からがまたすごくて、僕を超えちゃってるんですよ。何を言ったかと言うと『なぜ君がそれをプレゼントしたかを伝えてあげるともっといいよ』と言ったんです！」
「おぬし、やるな」と感じた鏡さん、今度はAI弟子に変化球を投げてみました。
「試しに同じMくんのデータで『宝石をプレゼントしたんだけど、どうだったかな』と入れてみたんです。そうしたら『どうしてそういうものをあげたのかな』と（笑）。威圧するようなことをするなってことですよね。それを率直には言わず、責めずに、合わない、っていうことをほのめかす。ちゃんとわかってるやん、この人（笑）」
そこまでいくと怖いところもあります。
「そうなんですよ。でも今のところやはり限界もすぐ見えてくる。同じようなことばかりくりかえしたりしてしまう。内容をうまくディレクションしていく必要はありますね。ただ、その指示の仕方がこれまでのコンピュータと違うので、難しくも面白いところです」。
《３》物事を白か黒かで考えないほうがいい
大きな星の動きでは、2025年は海王星が牡羊座に入ります。
「10数年ぶりに海王星が牡羊座に入ります。牡羊座は、英雄とかヒーローの星座なので、英雄願望みたいなものがより強くなる可能性があります。土星も入ってくるので、土星は現実なんです。だから理想と現実のコンフリクトが強くなります。個人レベルで例えると、推しがいてすごくいいと思っていたら、スキャンダルで超がっかり、みたいな感じですね。白か黒かで考えないほうがいい」
もうひとつ、天王星は水瓶座に。
「これから7年ぐらいの時間で、テクノロジーとコミュニケーションの急激な進歩。あとは学校教育の仕組みの変化を象徴します。あとは交通システムも急に変わります。自動運転、ライドシェアでの時代になるのかな。いずれにしても、システムの変化に順応していかないとですね」
「僕らの世代は新しいシステムはいつも大変」と苦笑いする鏡さんですが、すでにAIの開発にも携わっておられるのですから、次の時代にも西洋占星術のなかの真理を新しいやり方で伝えていかれることでしょう。
