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    第250回:歌心りえさん(シンガー)

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《2》10代と肩を並べて、50歳で挑んだオーディション

 韓国で拍手喝采を浴びるきっかけになった2023年10月から放送の「トロット・ガールズ・ジャパンオーディション」への出演は、知り合いからの軽い誘いだった。

「『こういうオーディションがあるんだけど、りえならできるんじゃない?』と言われたんです。オーディションだよな、どういうことだろうと首を傾げました。私、50歳ですよ(笑)、おかしいでしょ、と。他の人たちは10代だったりしますからね。若い人たちと肩を並べて、何をどうしたらいいのかなと。でもトロットって、日本でいう歌謡曲で、それはもう大好きだし。2~3日悩んで、自分でパソコンをかちゃかちゃして、応募しました」

 ところが歌心りえさんは、決勝まで行った。

「決勝まで行けたら本望だったので。良かった。これで終わった、と思ったら『はい皆さん、次、韓国行きますよ〜』と。韓国の『現役歌王』という番組で、トップ7になった人たちと、私たちで競い合うと。いやいや、無理でしょ、と」

 もちろん、そこでは韓国チームが優勝したが、意外なことがあった。

「韓国の人たちは動画もリサーチして、ちょっとは私たちのことも認知してくれていたようです。
 でもアウェイだし、ステージに出ていってもシーンとしちゃうんだろうなと思っていたんです。
 そうしたら、出ていった瞬間、みなさん、すごい拍手と声援で迎えてくれて。わー、このなかで歌えるなら、楽しんで歌うしかないと思いました。もう勝ち負けとかいいよね、と」

 最も喝采を浴びたのが『雪の華』のカバーだった。

「『雪の華』は、韓国の男性アーティストがカバーされていて、ドラマで話題になっていたようで、女性が歌うのを聴くことはあまりなかったのかも。そのギャップも良かったのかもしれません」

 もちろん『雪の華』の本家本元は中島美嘉さんだが、リリースは2004年と、もはや20年前の曲だ。
 歌心さんがうたう『雪の華』のはかなげだけれど芯のしっかりした美しい歌声は韓国の人たちの心をつかんだ。

「私のInstagramにもたくさんコメントが来ていたんですが、正直、見るのが怖かった。何か否定的なことを書かれて自分の気持ちが落ちるのが嫌だったので見ないようにしていたんだけど、ファンに『お願いだから見て』と言われて、見たら、優しい言葉が並んでいて。それがじわじわ、じわじわと、日本にも伝わってテレビの番組で取り上げられて、さらに知れ渡っていったという感じです」

 2025年1月の『歌ウマ女王日韓決戦 JAPAN ROUND』では、本田美奈子.の『つばさ』を歌い、審査員の涙を誘った。そのYouTube動画も、100万回再生に迫る勢いだ。
 今年2月22日には、韓国・ソウルでの初めてのソロコンサートも実現した。

「それ以前に『トロット・ガールズ・ジャパン』のメンバーでやったこともあったんですが、果たしてソロになったらどうだろうと。背伸びしないようにしようと250人ぐらいのキャパのところで、昼夜2公演やったんですが、ほぼ満席になりました」。

歌心りえさん

《3》息を吸って自然に吐くようにうたう。これだと思った

 伸びやかに、はっきりと言葉が伝わるようにうたう、今の歌心さん。しかし、それは今やっと出来上がったスタイルだという。

「若い頃は、高い声でロングトーンでわーっと歌って気持ちいいみたいな時期もありました。声量とかなんとかまったく考えずにね。悲しい歌をうたうときに自分の悲しい思い出を引っ張り出してきて感情込めすぎてトゥーマッチだったりね。でも歳を重ねて、だんだん俯瞰して考えるようになりました」

 これまでに2度、声帯を壊したことがあるそうだ。2023年、オーディションを受ける前にもというから驚く。

「全然歌えなくなった時期もありました。引っかかるような、喉の違和感がずっとあって。2023年の夏もそうなって、本当に筆談を余儀なくされていたんです。どう声を出せば楽になるか。強く出さなくても、パワーが強ければいいというものでもないな、と考えたり。それで歌い方を変えて行ったところはありますね」

 もう一つ、歌い方で影響を受けたのは、さだまさしさんとの出会いだ。

「2008年に『明日咲く花』という曲を、さださんに書き下ろしていただきました。そのときのデモテープは、ご本人が歌われていたんですね。それもびっくりしたんだけど、さださんの独特な語りかけるように歌う心地良さに、何かヒントがある気がして、何度も何度も聴いたんです。そうしたら、呼吸するように歌っているんですよ。息を吸って、自然に吐く。吐くようにうたう。あ、これだ、と思いました」

 🎵 よくがんばったねって言ってほしかっただけ あなたが気づいてくれたらそれだけでいい

 そんな歌詞で始まる『明日咲く花』は、歌心さんがSeptemberでうたっている頃の曲。

「その冒頭の歌詞に私自身も救われて。背中を押してもらっているような。さださんの気持ちも含めて、聴いてくれる人の背中を押す、寄り添えるものになるといいなと思いました」

 歌い手は歌に自分を重ねて、その歌を最もふさわしい状態で聴いてくれる人に届ける。聴いた人たちはまたそこでその歌を自分のものにする。歌心さんにその循環が起こり始めたのは、この歌からだったのかもしれない。

歌心りえさん

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