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  • 第33話 本日のお客様への料理『緑つながりのジェノベーゼ』

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🥂Glass 2

「根岸です。ちょっと歩くんですけどね」

 光はあっという間にパスタを平らげてしまった。紙ナプキンで口の周りを拭い、ビールをもう1本頼んだ。

 恭仁子が新しいビールの栓を開け、グラスと一緒に置いた。

「で、どんなお墓なんですか。今流行りの建物の中にあるようなのかしら」

「いや、寺の一角なんですけれどね。小さなガラスの墓が並んでいて、そのうちの一つなんですよ。何年か経つと、まとめて樹木葬にするようなんです。母はどうやってそこを調べて契約していたのか… まあ、僕にとっては負担はないですよね。それに、高台だと、階段上がったりしなきゃならないけど、平地だし。でもなんで横浜なんだよとちょっと思ったんだけど」

 幸はどきりとした。ひょっとして、ミツコは自分に来てほしかったんじゃないかと。そう思って光を見ると、ぱちっと目が合った。
 「あ」と、光は口を開けた。

「幸さんに来てもらいたかったのかな」

 幸はかぶりを振って言った。

「そんなに仲良しだったわけじゃ… あ、いや、そうかもね」

 最初は店の中の先輩と後輩。そうして店と店のライバル。…でもそれだけだったのだろうか。友達、というものが、常に仲が良くて一緒にいる同等なものだとは限らない。ひょっとしたら、ミツコと幸は、お互いがお互いにその存在を心の深いところで認めている、そういう友達だったのかもしれない。

「私、お参りに行きたいわ。場所、教えてくださいな」

 幸は次の休みに、根岸に行くことにした。

第33話 本日のお客様への料理『緑つながりのジェノベーゼ』

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